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令嬢ジュリー 栗原小巻 ジャン 清水綋冶 クリスティン 木村万理 1888年に書かれた「令嬢ジュリー」はヨハン・アウグスト・ストリンドベリの代表作であるに止まらず、近代戯曲の名作として世界各国で上演を重ねている。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 物語自体は単純である。 夏至祭の夜、伯爵令嬢のジュリーが、下男のジャンを誘い込み、かりそめの情事に耽ったものの、その結果互いの立場が逆転し、ジュリーが逆に追い詰められていくまでを綴っている。 表面的な筋をなぞるなら、美しく気位の高いジュリーが、自ら蒔いた種のため滅んでいく話である。 しかしストリンドベリはそれだけの話を書こうとしたのではない。 ストリンドベリに「令嬢ジュリーの序文」と題した一文があるが、その中で作の意図について次のようなことを書いている。 幸福とは比較の問題であり、上昇と下降の交替は人生最大の愉悦の一つである。 人生は大きなものが必ず小さなものを食い殺すという算術的なものではない。 蜜蜂が獅子を発狂させることも、たびたび起こりうるのだ。 自ら蒔いた種で滅んでいくジュリーの悲劇ではなく、男女の宿命的な戦いの姿であった。 美しく気品があり、同時に退廃的で官能に溺れ破滅する複雑な顔を持つジュリーには、ストリンドベリの屈折した女性への思いが集約されている気がする。 憧れの的であり、軽侮の対象でもあるジュリー。 そんな多面的なヒロイン像もこの作品の魅力である。 さらに付け加えれば、男女の間に横たわる溝は永遠に解決できないし、他者を完全に理解出来ないのも人間の宿命なのである。 桜美林大学教授・演劇評論家 水落 潔
by baranomi
| 2005-04-11 16:44
| 観劇
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